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第1回 東京メトロ事件と商標の不使用取消


1. 東京メトロ事件と商標の不使用取消
【知財高裁平成19年9月27日判決】
 X社は、第16類「新聞・雑誌」を指定商品として、「東京メトロ」という標準文字の商標の出願を、平成14年1月18日に行ないました。そして、この商標は、平成14年10月4日に、設定登録されました(登録第4609287号商標)。

この登録商標に対して、東京メトロを運営するY社が、平成17年10月26日、上記商標が使用されていないとして、本件商標の登録取消を求める審判(不使用取消審判)を請求しました。

特許庁は、平成18年12月5日、この商標の登録を取り消す旨の審決を行ないましたが、X社はこれを不服としてこの審決の取消を求める裁判を起こしました。

なお、判決によれば、X社は、平成17年4月29日から5月にかけて、世田谷区内において、「とうきょうメトロ」の表題が付された印刷物約8000部を無料で配布し、その後もその新聞は、継続して、創刊号から少なくとも第4号まで同一の商標を付して発行されていました。

しかし、特許庁は、この新聞は広告の収入により事業展開を行っているものであるから、他人の広告を掲載し、頒布するために用いられる印刷物にすぎないものであって、市場において独立して商取引の対象として流通に供されたものとは認められないから、指定商品「新聞、雑誌」のいずれにも含まれない商品である、よって、この商標は使用されていないと判断していました。



2. 判決の概要
【結論】
審決を取り消す。


【理由】
 商標法上の「商品」は、商取引の対象であるから、商品が対価と引換えに取引されるのが一般的である。しかし、「商取引」は、営利を目的として行われる様々な契約形態による場合が含まれ……取引を全体として観察して、「商品」を対象にした取引が商取引といえるものであれば足りる。

この新聞のような無料紙は、配布先の読者からは対価を得ていないが、広告については、広告主から広告料を得ており、これにより、利益が得られるようにしている。したがって、読者との間では対価と引換えでないとしても、無料紙を広告主に納品し、あるいは読者に直接配布することによって広告主との間の契約の履行となる。このように全体として観察するならば、商取引に供される商品に該当するということができる。

よって、この商標については、3年以内に日本国内において、指定商品につき商標を使用したことが認められる。



3. 解説
【商標の不使用取消審判】
 商標の不使用取消審判とは、ある登録商標が一定期間使用されていない場合、これを理由として、第三者が、その登録商標の取消を請求することができる特許庁の審判をいいます。

商標権者は、不使用取消審判の請求を受けたときは、請求についての商標を、この商標の指定商品・指定役務について、その審判の請求の登録(予告登録)前3年以内に、日本国内において、使用していることを証明しなければ、取消を受けることになります。なお、自ら使用していなくても、通常使用権者、専用使用権者が使用した事実でも足ります。

したがって、特に重要な商標である場合、他社から不使用取消審判を起こされる場合があります。そのため、登録商標を使用していることを立証できるよう、取引書類、広告といった書類を証拠として保存しておくことは重要であると思われます。

また、出願登録したものの、何らかの社内の事情で使用されておらず、しかし、権利を保持していたい、といった商標がある場合も、十分注意が必要です。


【商標を使用する商品】
 今回ご紹介した判決は、商標を使用する対象たる「商品」の意味を明らかにしており、参考になります。他方、特許庁は、X社が「東京メトロ」の題号を「無料配布の新聞」に使用したことについて、「新聞、雑誌」という指定商品への使用とはいえないと判断しましたが、これは妥当とはいえないでしょう。

なぜなら、無料であっても営利目的で新聞や雑誌や印刷物を配布するケースは多数あるわけで、これらの無料の新聞等が「商品」に該当しないとするならば、多くのビジネスが商標上保護されず不都合な結果が生じることになってしまうからです。





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