国際取引の最新事情と実務


第3回 国際取引における三国間貿易について

今月は三国間貿易による輸出について、ご説明いたします。
近年、日本企業のグローバル戦略に基づいた国際分業の発展は、貿易形態の姿も変化させてきています。その一つとして三国間貿易の増加が挙げられます。三国間貿易は日本の会社が海外の輸入者と商品売買契約を結び、購入される商品は海外の業者から海外の輸入者に直接輸出される仕組みをいいます。

例えば次のような取引形態です。

日本の企業A社が商品をドイツのB社に輸出するのですが、商品そのものはシンガポールのC社で製造しています。つまりA社にとっての仕入先はシンガポールのB社なのですが、日本の企業A社が商品をシンガポールのC社から日本に輸入した上でドイツのB社に再輸出するのでは、時間とコストが掛かりすぎて実際的ではありません。
そこで商品は製造元のシンガポールのC社から直接ドイツのB社に送って貰う方が遥(はるか)に時間とコストがセーブされます。このように、日本、シンガポール、ドイツの三国が絡んで、貿易を行なう行為を三国間貿易と言います。

ここで留意しなければならない重要な点は、取引の主体はあくまで、日本のA社とドイツのB社である関係です。この点を明確にして三国間貿易のスキーム(Scheme;計画、枠組)をA社とB社の間で詳細を確認しておかないと、A社の仕入価格がB社に知られるトラブルが発生し得るのです。

  A社  <---->  B社  商品の売買契約・・・・販売価格
A社  <---->  C社  商品の仕入契約・・・・仕入れ価格


通常、商品を輸出する際には輸出者(この場合はシンガポールのC社になります)は輸出通関用書類として自社のインボイス(Invoice;請求書)とパッキングリスト(Packing List;貨物の梱包明細書)を作成しなければなりません。

この例の場合、商品はシンガポールからドイツに輸出されるので、シンガポールのC社が作成したインボイスが輸出通関時には提示されます。しかしこのインボイスに記載される価格は日本のA社との間で取り決められたA社の仕入れ価格であって、ドイツのB社の購入価格ではありません。

シンガポールのC社がドイツのB社と売買契約を結んでいるのであれば、当然C社が作成したインボイスがドイツのB社に送付されます。ところが本件の場合は、シンガポールのC社はあくまで日本のA社の仕入先であって、ドイツのB社とは取引関係がありません。従ってC社のインボイスはドイツのB社に送付は出来ません。

このような、トラブルを防ぐためには、

  1) 建値をF.O.B. (Free on Boardの略)か、FCA(Free Carrierの略)とし、シンガポールからドイツ迄の輸送は日本の企業であるA社が指名したフォワーダー(Forwarder;仲介人として輸送を手配し関連書類を作成する代理業者)を起用する。
2) シンガポールのC社に対し、C社が作成するA社宛のインボイスは、船積み書類としてドイツに発送させない指示をする。パーチェス・オーダー(Purchase Order;注文書)もしくはC社との基本契約にその旨を厳然と明示しておく。
3) 更にダブルチェックの意味から、指名したフォワーダーにもその旨を伝え、万一船積み書類の中に当該インボイスが含まれていたら回収するように指示をする。
(このようにA社が直接フォワーダーと連携がとれるようにするために、建値をFOBかFCAにしておく必要があります。)
4) 海上輸送の場合、決済がL/C(信用状)でなければ、B/L(船荷証券)はA社がドイツのB社に送付する。その際にA社のインボイスを送付すれば良いので問題はなくなる。
5) 航空輸送の場合は、決済がL/C(信用状)でなければ、AWB(航空運送状)にC社のインボイスをアタッチ(添付)しないよう、B社及びフォワーダーに依頼する。
6) 上記4.と5.で「決済がL/Cでなければ」と条件を付したのは、L/Cの場合はB/LもAWBもL/Cの買取書類の一部になるので、当然のごとく、A社に送付され、A社がL/C買取りの際に日本の買取銀行に提出するからである。


以上の通り、シンガポールのC社はあくまでもA社の仕入先です。商品がシンガポールのC社からドイツのB社に輸出されると言っても、A社がC社から仕入れた商品をドイツのB社に輸出されるのです。C社はA社とB社の取引に何等介在されていない旨を明確に認識していれば、C社の書類がドイツに回付される訳はありません。

ところがこのような三国間貿易の特質を十分理解していない為に、C社の書類がドイツに回付されてしまい、取引上のトラブルがしばしば発生しています。国際取引に於ける専門知識を正しく理解して対応しないと、結果的に大きな損をする可能性があります。どうぞご注意下さい。







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