国際取引の最新事情と実務


第4回 国際取引における信用状決済の安全確保

今月は信用状による輸出取引について解説致します。

国際取引の代金決済方法には、買主が商品受領前に代金を支払う前払方式と、買主が商品を受領した後代金を支払う後払方式と、があります。
これらの代金決済方法は何れも、買主と売主双方共にゆるぎない信頼関係が無くては成り立たない代金決済方式です。
商品を受け取る前に支払う前払方式を採った場合には、代金は支払ったが本当に商品が送られてくるのかと言う不安があり、一方後払い方式の場合には、商品は発送したが本当に代金を支払ってくれるのかと言う不安がつきまといます。

そこでこのような不安を解消させる代金決済方法に、信用状(Letter of Credit;L/C)による代金決済方法が用意されています。輸出者の中には「この取引はL/C決済だから」と盲目的に安心してしまう人がいます。信用状決済は本当に安全でしょうか。信用状取引でも必ずしも安全な取引とは言えません。信用状による取引と決済の仕組みは、もう既に皆様もよくご存知かもしれません。しかしここでちょっとお復習(さら)いをしてみましょう。

信用状とは、輸入者(信用状発行依頼人)の取引銀行(信用状発行銀行)が商品代金の受取人である輸出者(受益者)に対して、輸出者(受益者)が信用状に記載された条件と一致した書類(厳密一致の原則)を呈示するのを条件に、輸入者(信用状発行依頼人)に代わり商品の代金を支払う旨を確約した所謂「保証状」です。
この様に輸入者である買主が信用状の買取条件を設定し、自社の取引銀行(信用状発行銀行)に発行依頼をして、初めて信用状は発行されます。
一方輸出者が信用状に基き代金決済するには、輸入者が設定した信用状条件に完全に一致した書類を記載条件通りに、輸出者(受益者)が買取銀行に呈示しなければなりません。

信用状取引で発生する最大のトラブルは、下記の場合に信用状発行銀行が支払を拒絶する事態です。これをアンペイド(Unpaid;支払拒絶)と言います。

輸出者(受益者)が提示する書類に、信用状に記載された条件との不一致が見られた場合、
信用状に記載された必要書類が揃わなかった場合、


信用状取引では信用状が届いてから、提示書類と信用状記載の条件を慎重に点検して不一致を起さない様にする配慮が不可欠です。万一矛盾点を発見したら、直ぐにアメンド(Amendment;訂正依頼)を行い信用状発行銀行に訂正してもらわないと、買取の際に不一致(Discrepancy;ディスクレ)として代金支払を拒絶されてしまいます。

しかもこのアメンドにはその都度、銀行アメンド料が発生します。しかもアメンド料は、アメンドを依頼する側が費用負担するケースが多いのです。従って極力アメンドをしないで済むように、輸入者(信用状発行依頼人)に対し輸出者(受益者)から信用状に記載する条件を予め下記の通り提示しておくのが最善の方法です。海外取引に精通している企業は概ね「Standard Form of L/C」等と称して、自社のために発行するL/Cはかくかくしかじかの条件に基づいて発行する、との基準(ガイドライン)を用意しています。


  1) 信用状の発行期日と有効期限を輸出者(受益者)の立場で指定する。

1) 信用状の発行が商品船積みの直前になされ、或いは有効期限が極端に短い信用状を発行されては、輸出者にとっては極めて危険度の高い信用状になってしまいます。従って信用状発行期日は契約締結或いは注文書発行後、速やかに発行させ、有効期限は船積み予定日より、最低21日後とする。
2) 最も確実なのは、船積み時期を「信用状受領後○○日」と契約書或いは注文書に条件付けておく方法です。
2) 買取に必要な書類の呈示期限は、船積み予定日後21日とする。
買取書類の呈示期限が極端に短いと、その期限内に書類が揃わずLate Presentation(期日超過後の呈示)となりアンペイド(Unpaid;支払拒絶)になります。
輸出者(受益者)にとっても、早くL/Cの買取りをして貰い、現金化したいのは当然です。幾ら船積み予定後21日間の提示期限があっても、一刻も早く書類を買取銀行に呈示しますが、不測の事態が生じてLate Presentationにならないためにも、提示期限にはゆとりを持たせておくのが肝要です。
3) 呈示書類は運送書類(船荷証券、航空運送書類、或いはクーリエ受領書等)、インボイス(Invoice)、パッキングリスト(Packing List)の3通りとする。
4) 特に輸入者(信用状発行人)が作成、或いは署名しなければならない書類は呈示書類に含ませてはならない。もしそのような書類を呈示しなければならないのならば、輸出者(受益者)は輸入者(発行依頼人)からそのような書類が正確に記述され、且つ期日までに受け取れるかという未確定な部分が生じるからです。
5) 輸入者(信用状発行依頼人)が輸入通関時に必要とされる特殊な書類を信用状の買取書類に含めるよう条件付ける信用状が時たま見受けられます。そのような書類を信用状の買取条件にすると決済に支障が出る可能性があります。その様な書類を決済条件にはせずに、輸入者への別途送付を輸出者の契約上の義務として設定すべきです。



信用状はあくまで、商品代金の決済手段の一つですから、輸出者と輸入者の商品売買契約のうち、(何を、幾らで、何時迄に、どのような輸送手段で輸出するか)という基本要件に基き発行されるべきです。その他の契約上の権利義務関係を信用状の買取条件に加え、決済条件を複雑に或いは難しくしてはいけません。
信用状は売買取引当事者間の売買契約とは別個の独立したもの(信用状独立の原則)である旨を十分に理解しておく必要があります。






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