国際取引の最新事情と実務


第6回 ウィーン売買条約(国際物品売買契約に関する国連条約)について

 ウィーン売買条約は、国連国際商取引法委員会で起草され、1980年にウィーンで開かれた外交会議で採択され、1988年に発効されたものです。
現在この条約に加盟している国は米国、カナダ、メキシコ、韓国、中国、シンガポール、オーストラリア、オランダ、フランス、イタリア、ロシア等70カ国で、先進国の中で加盟していないのは日本と英国のみとなっています。




わが国の対応

 我が国は過去国際取引に於いては英米法を実質的な統一法として機能させており、且つ大手企業を中心とする産業界でも、特段加盟する必要性を見出せなかった事情等が起因し今日迄、本条約加盟に向けての積極的な動きを見せて来ませんでした。しかし近年先進国の中で、英国を除く全ての国が加盟し、且つアジアでは中国、韓国等が加盟している事実を勘案し、ようやく2008年の169回国会に承認案件として提出されました。
関係者の予測としては今年秋口には国会で承認される運びになるだろうと見ています。



ウィーン売買条約の目的及び構成

 この条約は国際経済秩序の樹立を目指し、互恵平等を基礎にした国際貿易の発展は国家間の友好関係を促進する重要な要素である旨を考慮し、国際取引に於ける法的障害を除去し、且つ国際取引の円滑な発展を促進することを目的として、1980年に国連総会で採択された、条約です。
本条約は前文、本文101条からなり以下の通り4部構成となっています。

 第1部 : 本条約の摘要範囲及び総則
 第2部 : 契約の成立
 第3部 : 物品売買(物品の売買に関する規定、及び売主、買主の権利義務に関する規定)
 第4部 : 最終条項(条約の効力発生、並びに留保件等に関する規定)



ウィーン売買条約の概要


注目すべき事項を摘出して下記いたします。

1. 条約の摘要基準(第1章第1条)
この条約は営業所が異なる国にある当事者間の物品売買契約につき、次の場合に適用される。

1) これらの国がいずれも締約国である場合、又は
2) 国際私法の準則が、ある締約国の法の適用を導く場合。
但し、次の売買には摘要しない。(第1章第2条)
3) 個人、家族又は家庭で使用するために購入された物品の売買
4) 競売
5) 強制執行その他法令に基づく売買
6) 株式、持分、投資証券、流通証券及び通貨の売買
7) 船舶、艦船、ホヴァークラフト及び航空機の売買
8) 電力の売買


2. 契約の成立(第2部第14条から第24条)
下記の通り契約の成立前提が我が国民法と異なっている点に注意して下さい。
本条約では契約の成立は承諾の到達時をもって契約成立とする到達主義であり、我が国民法第526条の「隔地者間の契約は、承諾の通知を発信した時に成立する。」と言う発信主義を採用していません。
また我が国の民法第524条では「承諾の期間を定めないで隔地者に対してした申込は、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは撤回できない。」としているのに対し、本条約では「相手方が承諾の通知を発する前に撤回の通知が相手方に到達する場合は撤回できる」としている。


3. 商品の保証期間(第3部第39条)
本条約では保証期間を2年と定めている点に注意して下さい。
もし保証期間を1年としたいのなら、契約書にそのように規定すれば足ります。契約書の条件が優先されますから。ただ、保証期間を契約書に明記していなければ、自動的に保証期間は2年となります。


4. その他
本条約に我が国が加盟したら、この条約は国内法となります。従い、個々の物品売買契約にこの条約を適用させたくないのなら、適用除外の文面を個々の契約書に明確に規定しておく必要があります。もしその旨の記載が契約書に反映されていない場合には自動的にこの条約が基本法として適用されます。
また、本条約により規律される事項で、条約中に解決方法が明示されていない問題については、この条約の基礎にある一般原則に従い、またそのような原則がない場合には国際私法の準則により適用される法に従って解決されるべきものとする。(第1部第7条)とありますように、準拠法を国際私法の準則に委ねるということで、一歩前進したかに思われます。但し、準拠法をなじみのある国内法に適用させたいというのであれば、仲裁条項で被告地主義を採るのが良いと思います。







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