国際取引の最新事情と実務


第16回 国際取引契約におけるWHEREAS CLAUSEについて

 今回は英文契約書でよく見られるWHEREAS CLAUSEについて概説いたします。

英文契約書では契約の当事者や契約締結の日付などが示される頭書部分があります。その次にWHEREASで始まる文章がいくつか記述されます。この箇所はWHEREASではじまるので、一般的にWHEREAS CLAUSEと呼ばれています。

その後、NOW, THEREFORE, in consideration of the premises and the mutual covenants hereinafter contained, the Parties hereto agree as follows.というNow, therefore で始まる約因文言につながります。
ですから、当初はこのWHEREASから始まるWHEREAS CLAUSEは次に来る約因文言に密接な繋がりをもたせるために、契約当事者双方の対価関係を記述しておりました。

例えば、物品売買を例にしますと、「A社はある物品の所有権者であり、その物品をB社に販売することによってその所有権を移転する意思があり」、「B社はその物品をA社から購入して所有権を得たいと希望している。」と記述されます。
従ってNOW, THEREFORE(そこで・・・)で始まる約因文言つまり、「そこで、本契約の約束及び約定の約因として、本契約当事者は以下の通り合意する。」に繋がるのです。

ところが現在はこのWHEREAS CLAUSEに契約当事者の対価関係を記述する例はあまり見受けられなくなっています。主として、契約当事者のステイタスとか、契約を締結する背景や目的などを記述する例が大部分となっております。
理由は定かではありませんが、契約本体部分で契約当事者間の対価に関する権利義務関係について詳細を規定するのだから、前文で記述することによる不測の矛盾なり、誤解を避けるためだと私は推定いたします。

いずれにしても、約因文言の前提部分として存在する契約の前文という位置づけになりますから、特段法的効力を有するものではありませんので、このWHEREAS CLAUSEがなくても、契約は有効に成立します。だからと言って、このWHEREAS CLAUSEに記述された内容が事実・実態と甚だしく乖離したものであってはなりません。

例えば、ライセンス契約などの場合WHEREAS CLAUSEに;

WHEREAS, the Licensor is engaged in the continuous development of the Licensed Products through its oganization. と記述したにも拘わらず、許諾商品の継続的な開発を中止した場合、ライセンシーはライセンサーの継続的な開発に期待して契約したという、契約目的を根底から覆すことになり、場合によってはライセンシーの被った損害を賠償しなければならないことにもなりかねません。
このように、WHEREAS CLAUSEは一般的には契約上の法的拘束力は持たないとは言うものの、記載内容によっては損害賠償の責めを負う事にもなりかねません。
従って、WHEREAS CLAUSEの記述は事実をありのまま、簡潔に記述しなければなりません。

英文契約書のサンプルは随所に見受けられます。しかしサンプルはサンプルに過ぎません。実際の契約はそれぞれのビジネスに立脚したものです。必ずしも一つの契約書パターンが他の全てのビジネスにそのまま適応できるとは限りません。英米法を背景としている英文契約書の本質を正しく理解し、問題のない国際取引の遂行が要求されています。

不明な点は曖昧にせず、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。







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