国際取引の最新事情と実務


第17回 国際取引における契約の成立

 今月は契約の成立について気が付いた事柄をお話しします。

 契約は、当事者間の申込(Offer)と承諾(Acceptance)という二つの意思表示の合致によって成立するとされています。例えば、買い手が「これを注文します。」と申し込み、売り手は「それを売ります。」といえば、基本的に契約は成立します。申込と承諾という二つの意思表示が合致したからです。
この行為が書式で行われる場合は通常買い手は売り手に対し注文書(Purchase Order)を発行し、売り手はその注文という申込の承諾の証として注文請書(Confirmation of Order)を買い手に送付します。

買い手から発行される注文書が売主と買主による売買基本契約書に基づいたものであるならば、この売買契約に関わる双方の権利義務関係はこの基本契約書によって既に両当事者間で合意されており、その契約行為の一環として、Purchase Orderが存在するわけです。
しかしながら、通常の取引の中には売買基本契約を締結せず、最初から注文書(Purchase Order)の形式で売買取引を実現させるケースが多く見られます。このような取引においても、契約は当事者間の申込(Offer)と承諾(Acceptance)と言う二つの意思表示の合致によって成立するものですから、売買基本契約書のある無しに関らず注文と承諾による意思の合致で契約そのものは成立します。

ところで時たま、注文請書(Confirmation of Order)の裏面に定型約款が細字で印刷されているのを見かけます。承諾とは申込の条項を過不足なく全面的に受容れたものでなければなりません。申込の条件を一部変更したり、追加したりした場合は承諾とは云えません。これは鏡像の原則(Mirror Image Rule)と呼ばれ、申込と承諾はあたかも鏡に反映されているように、全ての事項が合致していなければなりません。
注文請書(Confirmation of Order)の裏面に記載されている約款が全て買主からの条件に合致している内容ならば問題はありませんが、予め注文請書に印刷されているということは、必ずしも、買主の注文条件に合致しているとは言い切れません。むしろ予め印刷して用意された約款は、売主の側から見て有利な条件を記載するのが常です。従って約款が印刷された注文請書は、売主の追加的な条件を買主に課す為に提示されたと見る方が法的には妥当と云えましょう。

そうなりますと契約を正式に成立させる為には、売主が発行した注文請書に対して、今度は買主から注文請書の裏面に記載された条件を承諾するという確認が更に必要になります。約款が印刷された注文請書の提示は、申込に対する条件付き承諾になり、反対申込であり、且つ厳密にいうと買主からの注文書に対する承諾にはなりません。

注文請書はあくまでも、注文に対する承諾の意思表示である以上、予め裏面に約款を印刷しておくのは、適当ではありません。買主による注文書に完全合意をし、契約成立を望むのであるなら、注文請書には自社の約款をつけるべきではありません。
嘗て注文請書に自社の約款を印刷していた会社があり、私が直接担当者に何故注文請書に約款を印刷して入れているのか、と質問した所、Confirmation of Orderの雛形にそういう例があったからとの回答でした。

注文書はあくまでも申込です。注文する上での条件として注文書に印刷約款を挿入しておくのは問題ないでしょう。しかし注文請書は該当注文に対して、全ての事項を承諾した上で、その注文を引き受けるという意思表示である以上、予め印刷された約款を注文請書に入れる行為は、取引を円滑に進める上で適切ではありません。







この件でのお問い合わせは、有限会社 ワイ・エストレーディング 代表取締役 清水康男 殿に直接ご連絡をして頂くか、こちらのお問い合わせフォームをご利用下さい。


Copyright© hirakawa tax. All Rights Reserved.