国際取引の最新事情と実務


第18回 国際取引におけるDDPについて

 今回はインコタームズのDDPについて、最近問合せがあった実例を基にご紹介致します。

日本の企業A社が、空気清浄器をドイツのB社に輸出すべく交渉を重ねてきた結果、B社からオーダーが入ってきたのですが、取引条件がDDP Frankfurtになっていました。A社にはDDPは初めて受けた取引条件であり、よく分からないので、どのように対応したら良いのかというのが私への相談内容でした。この件を本稿で紹介するに当たり、A社の了解を得ましたので、具体的な対応を簡単にご説明致します。

先ずインコタームズのDDPについてご説明致します。DDPとはDelivered Duty Paidの略で「関税込持込み渡し」を意味します。この条件は売主が仕向け国での輸入通関を行い買主の指定した場所で物品を引渡す取引条件ですから、売主は買主が輸出先国の指定した場所まで、売主の費用と危険を負担して契約商品を持ち込む義務があります。

従ってこの事例では、A社がドイツで輸入通関をした後に、B社の指定したフランクフルトの倉庫で契約商品をB社に引渡す条件になります。この条件は典型的な揚地契約(Arrival Contract)で、A社はA社の費用と危険負担をもって、契約商品(空気清浄器)をフランクフルトにあるB社の倉庫に搬入すると言う非常に広範囲な義務を負う契約になります。

B社が取引条件として、このようなDDPを希望している理由としては、今までアジアからの輸入については、輸入通関時に常にトラブルが発生し、その度に予期しない労力を費やしてきたので、特にアジア地域からの輸入についてはDDPにしたい、というのがB社の意向です。もしA社がDDPをアクセプトしないのなら、韓国のメーカーは既にDDPをアクセプトしているので、そちらにスイッチせざるを得ないと言ってきました。更にB社としては、品質面等からA社の空気清浄器を購入したいのはやまやまだが、DDPを他の取引条件に変更する意図はないとの説明でした。
B社が過去輸入通関時に具体的にどのようなトラブルがあったのかは明らかにされませんでしたが、DDPによる輸入を頑なに固執しておりました。

そこで私はA社に対してDDPによる取引条件をよく説明し、最もリスクの少ない方法を次の様に提案しました。

1. 物流業者の選択:
横浜港からハンブルグまでの船の手配が出来、かつ横浜港での輸出通関とハンブルグでの輸入通関のできる業者を選択します。従って、ハンブルに現地法人がある物流会社の選択になります。物流会社によっては現地法人を持たずに、現地の物流会社と提携して業務を行っている所もありますが、私は現地法人を持っている物流会社に的を絞りました。
2. ハンブルグでの輸入通関及びハンブルグ港からフランクフルトの指定場所までの輸送費の見積をその物流会社から入手し、インボイス価格に反映させます。
3. ドイツ輸入時に発生するVATについてはB社が負担する旨B社の合意を取り付けました。(VAT:Value Added TAXの略称。「付加価値税」と訳します。輸出入を除く、財・サービスの購入について課税されます。)
インボイスにはその旨記載します。
4. フランクフルトの指定場所でB社へ契約商品を引渡す上での、事前打ち合わせ及びA社の指定した業者との顔合わせを兼ねて現地でA社の指定業者とB社で打ち合わせを行わせます。

以上の仕組みを日本側で事前に物流会社と詰めておき、その業務フローをB社に提出し、お互いに合意に達しました。
契約商品は5月13日にハンブルグ港に到着し、指定物流業者とドイツのB社との連携も上手く行き、問題なくフランクフルトの指定場所で、B社に引渡すことができました。

揚地契約であるDDPを支障なく遂行する一番の要素は物流会社の選択です。DDPに限らず、揚地契約を海外の顧客と締結するということは、まさに国際ロジスティックスのチャネル作りであるとも言えます。海外取引におけるモノの流れに焦点を合わせた今回の事例は最適な国際物流の構築を進める上でA社にとっては良い基礎を固めた結果になりました。







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