国際取引の最新事情と実務


第20回 国際取引における英文契約について

今回より数回に分けて国際取引で必要となる英文契約書について概説してまいります。
国際取引契約を締結する場合、その使用言語は勿論何語でも構いませんが、今日広く一般的に利用されている言語は英語です。ですから国際取引契約書のことを指す時は一般的に英文契約書とも言われていますが、英文契約書というと、日本語で記述された取引契約書を単純に英訳したものが、英文契約書であると勘違いされている方が結構いらっしゃいます。これは大きな誤りです。
前回の論稿でも触れましたが、法制度の異なる外国の企業と締結する契約は本質的に国内取引契約とは異なった視点で捉えなくてはならない部分が沢山あります。このシリーズでは英文による国際売買取引契約書について、国内取引契約書との違いなどを織り交ぜながら概説してまいります。

今回は、前文の導入部つまり契約当事者の表示の箇所からご説明します。日本語の契約書ですと、この前文の導入部は概ね次の通り表現されています。

XXXXX株式会社(以下「甲」という)と○○○○株式会社(以下「乙」という)は甲と乙の間における売買取引について、次の通り、基本契約を締結する。

国際取引に基づく英文契約書になりますと、この部分は次の通りとなります。

This Agreement is made and entered into this    day of    2009, by and between XXXXX Co., Ltd., a corporation duly organized and existing under the laws of   国名   having its registered office at   登記上の本店所在地   (hereinafter called as the “Seller”) and ○○○○Co., Ltd a corporation duly organized and existing under the laws of   国名   having its registered office at   登記上の本店所在地   (hereinafter called as the “Buyer”)


この部分、つまり契約書の導入部分に於いて、国内契約書と英文国際契約書の記述方法の違いは次の三点となります。


1. 契約当事者の表示:
契約当事者の表示については国内契約書の場合ですと、ほとんどの場合甲と乙で表現  されますが、国際取引契約書では契約当事者を甲とか乙と言うように総称する習慣がありませんので、英文売買契約書の場合ではBuyer (買主)Seller(売主)というように契約当事者の契約上の立場で総称するのが一般的です。

2. 契約当事者の記載住所:
英文国際契約書では契約当事者の住所は登記上の本店住所であることをこの導入部で明らかにさせています。
国内契約の場合ですと、時たま「 ZZZZ県XXX市1−2−3に登記上の本店を有する甲と東京都XXX区ZZZZ町2−3−4に登記上の本店を有する乙は・・・・」のように登記上の住所であることを明示した契約書もありますが、大部分は前に例示した通り、甲、乙の会社名を記述し、住所は署名欄に記述される場合が多く見受けられます。
いずれにせよ、この部分での住所の記載目的は当事者の同一性の認識にあるわけですから、登記上の本店住所(registered office)として明示して、住所を記載する必要があります。
よく、「登記上の本店住所は登記の目的のためであって、実際の実務を運営している住所を記載した方が、当事者間の通知にも支障ないので現実的だ」と言う人がいますが、これは誤りです。当事者間のコミュニケーションルートについては契約書の中で「通知」という条項を設けその条項の中で双方の連絡先や連絡手段など詳細を規定できます。

3.契約当事者の法人設立準拠法:
この箇所の目的は契約当事者であるその法人が法的に適正に存在しているかを確認するものであり、且つその法人の法的契約締結能力などにも関連してきますので、その法人がどこの国の法律に従って設立され現在存続しているかを記載することは国際取引契約では必要になります。ですから会社名の後に a corporation duly organized and existing under the laws of   国名    という文言が必要なるわけです。








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