国際取引の最新事情と実務


第26回 国際取引における英文契約書−不可抗力

今回は不可抗力条項について概説いたします。

英文契約書では「Force Majeure」という表題で規定されています。この不可抗力条項は当事者の力をもってしても如何ともし難い、不可抗力と言う事由による履行不能が発生した場合に、当事者間の権利義務について定めているものです。
この履行不能という事実に付いての契約上の論理構成には、英米法と日本を含む大陸法とでは異なった視点からアプローチがなされております。

大陸法系の諸国の法律では表現の差はあっても、いずれも当事者の責に帰さない後発的履行不能の場合には、契約上の債務は消滅し、損害賠償の責任からも免れるとしています。(注:我が国の民法419条第3項では金銭の給付を目的とする債務の不履行による損害賠償は不可抗力をもって抗弁とすることは出来ない、とあります。)

これに対して、英米法の捉え方は違っています。後発的履行不能は当事者の責に帰さない場合であっても、契約上何の変化も及ぼさないとします。つまり契約当事者は自らの義務や責任を契約上課している以上、その履行が何らかの事由によって不能になっても、自動的には履行する義務を免れないとする考え方が基本にあります。
ですから後発的履行不能の要因のうち、当事者の責に帰さない事由を明確にした上、その事由に限定して、債務が消滅し、損害賠償の責から免れるよう、契約に規定すべきである、と考えるのです。

従って契約当事者の責に帰さない後発的履行不能を成立するためには、一定の要件が満たされる必要があり、単に債務者が善意の無過失というだけでは事足りません。つまり自己の力を持っても如何ともし難い事由、即ち「不可抗力」の場合などと抽象的に規定したのでは、その事由が本当に不可抗力に該当するのか、当事者間で問題になる訳です。そこで不可抗力の内容を具体的に列挙し記載するのが通常となっています。

一般的なForce Majeureの条項をご覧頂けるとお判りになるように、大火災、洪水、ストライキ、労働争議等々不可抗力を具体的に示す事由を列挙します。尚、この手法は国内の契約書には見られない条項の構成です。
具体的事由を列挙する場合、列挙すべき事由を入れ忘れてしまう場合もあり得ます。その様な事態と不安を解消し、免責の範囲を全般的に拡大しておきたいのが、条文立案者の思いです。そこで列挙した事由の後に、

・・・・, or any other cause beyond the control of the parties whether of the same kind as the cause before enumerated or not.

とか或いは、列挙する事由の前に、

・・・、including but not limited to

等と包括文言を付ける必要があります。

英文契約書は英米法の思考を受け継いで作られます。この不可抗力条項などは、特に英米法の特徴を顕著に現している事例でしょう。英文契約書は単に国内契約書を英訳すれば良いという訳ではないことがお判り頂けましたでしょうか?








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