国際取引の最新事情と実務


第30回 国際取引契約書−注文書の裏面約款

 今回は注文書Purchase Orderの裏面約款について、事例を交えて概説致します。

日本の玩具の輸出者が米国のバイヤーから注文書を受け取りました。注文書には注文商品、数量、支払い価格、支払い方法、船積期日などが記載されており、全て事前に電子メールでやりとりした通りの条件でした。支払い条件は事前に打ち合わせた通り50%契約時、残り50%は船積完了時に、電信送金という条件でした。
初めての取引にも拘わらず、リーゾナブルな支払い条件であり、しかも注文書に注文を受諾した旨の署名欄にサインして返送したところ、きちんと50%分を送金して来ました。

 相談依頼は、当事者の社長が商品出荷後、何となく裏面約款を読んだ所、売主にとって甚だきつい、one way contractのような気がするとの疑問を抱き、私に契約書のレビューをしてコメントをくれないかとの要望でした。私も一通り契約書に目を通してみました。すると社長が言う通り売主にとっては容認しがたい条件の羅列でした。
裏面約款は予め注文書の裏面に取引の一般条項などを、主に売主の義務を中心に規定した、どちらかと言うと、買主にとって都合の良いような規定になっています。

 今回の事例ではこの細かい字でびっしり書かれた規定を充分に読まずに、注文書の表面に記載されてある条件だけをみて、電子メールでの事前打合わせと矛盾はないと判断して署名し、商品を船積したのです。代金も船積時に回収出来たので、とりあえず輸出に際しては問題はありませんでした。しかし裏面約款に記載されてある条項で、特に保証条項については注意を要します。

例えば、下記の様な条件が裏面約款に規定されていると特に厄介です。


Seller shall be responsible for latent defects of the Goods at any time after the delivery, notwithstanding inspection and acceptance of the Goods whether by Buyer or Buyer’s customer(s), provided that a notice of claim shall be made as soon as reasonably practicable after discovery of such defects.


 上記条項の趣旨は「商品の引渡後であっても、買主もしくは買主の顧客がこの商品の隠れた瑕疵を発見したら合理的な期間内に売主への通知を条件に、売主はその商品の瑕疵に対して責任を負う。」という内容です。これでは保証期間を定められていないので、買主側は何時如何なる時でも売主にクレームが付けられる旨の規定です。
この様な歯止めなく責任を負わされるのでは売主はたまったものではありません。しかし、現実にはこのような類の条項はほぼ全部と言ってよい程、裏面約款に規定されています。勿論平等な双務契約として規定されている裏面約款もありますが、その様な例は極めて少ないのが現実です。
裏面約款は注文書の場合では買主が、Sales Note(売約書)の場合では売主が、予め印刷してあるので、各条項は其々発行者側が有利になるように規定されています。ここに「書式の戦い」という現象が発生する所以があるのです。

 つまり売主の印刷条項を採用するか、買主の印刷条項を採用するかという「戦い」です。しかし私はビジネスの中でこれほど、無意味な「戦い」は無いと思っています。私がこの相談者に提案したのは、とりあえず輸出代金は100%回収されているので、今後の継続取引という点に焦点を絞り、取引基本契約か、もしくはDistributorship Agreementを締結する方向で今後は話を進めていく様に勧めました。
その交渉段階で、売主・買主双方の権利義務関係を明確にして、平等な契約関係を築き、円滑なビジネス関係を整えて行く配慮と努力が必要なのです。







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