「金融機関から選ばれる財務戦略」 

平成22年2月5日



中小企業における資金繰りの考え方 INDEX


【資金繰りの重要性】
 会社には数多くの事務処理があります。そのなかで資金繰りは、事務処理の中でも最も重要な業務です。それは会社を経営するに当って、経営者は企業の成長性、収益性、安全性を健全に保つ様に要求されるからです。特にこの中の安全性には、資金状態の安全が含まれます。
つまり経営者は常に会社の資金繰りに注意を払い、先々の資金状況を見通しておく必要があります。


【資金繰り表の資金とは】
 資金繰りを理解するには、「資金」とは何かを明確にしなければなりません。資金繰りに於ける資金とは、何時でも支払手段に充てられる現金と預金等です。具体的には売上代金の回収、仕入代金、給与、諸経費の支払に利用している当座及び普通預金口座です。定期預金、貯蓄性保険、有価証券も資金です。しかし通常は即時に換金が出来ないので、資金繰り上の資金には含めません。
また「資産」と資金とは異なります。例えば上記の定期預金等と同様に、不動産や設備等の資産は換金に時間を要し、即時の支払手段には活用出来ないからです。
資金繰りとは、一定期間の資金の動きを「把握」し、「予測」する実務手続です。そのためには「資金繰り表」を作成する必要があります。


【中小企業の資金繰り】
 多くの中小企業において、創業時の自己資金は不足しがちです。これは創業資金である株主からの資本金が少額な場合が殆どだからです。大半の中小企業の株主はその代表者と親族、知人、友人らで占められており、十分な資金の確保が出来ず、設備資金や運転資金が不十分なまま事業開始をせざるを得ません。

そこでどうしても金融機関からの融資(借入金)に依存しなければなりません。自己資本である株主からの出資とは異なり、他人資本である借入金は返済しなければなりません。たとえ経常収支がプラスであっても、そのプラス分を借入金の利息支払と元本返済の原資に充てて行かなければなりません。その結果、大半の中小企業は資金収支が厳しい状態に置かれます。

企業経営に必要不可欠な機械購入、事務所保証金、営業車両、事務機器等の設備資金に借入金の大半が充当されます。これら設備資金の回収には長期間を要し、更に一定期間経過後は設備を更新しなければなりません。一方で借入金の返済は毎月一定額を5年から7年で行わなければなりません。本来設備投資は返済不要の資本金で賄い、得られた利益で更新をするのが理想的です。しかし普通は十分な資本金が用意出来ないので、借入金で賄わざるを得ないのが実情です。そこで設備の更新のためには、当初借入れた額とほぼ同額の借入をして、それを返済原資にしなければなりません。

今日の経済及び金融情勢の下で全体的に売上が低迷縮小している状態で、売上規模に見合った企業規模へのダウンサイジングを果たしていない中小零細企業が、資金繰りに窮しているのがよく見受けられます。
企業業績が低迷している状況では、金融機関からの新規融資及び設備の折返しを含めた追加借入も困難で、その結果手元資金が薄くなっていきます。この様な状態に陥るとなりふりかまわぬ経費削減から、消費税や固定資産税の繰延または分割払い、業者仕入代金の支払サイトの延期や支払遅延を行わざるを得なくなります。企業存続の為に実施したこれらの対処が企業の信用失墜を招き、取引先の条件が厳しくなって行き、益々業況が悪化するという悪循環に陥ります。


【資金繰り表の作成と活用】
 資金繰り表、特に資金繰り「予定表」は、企業が目先の課題を乗り越える為には必ず作成する必要があります。資金不足が生じれば企業の生命は絶たれます。その様な事態に陥らないためには、目先の資金繰りを注視し、資金不足にならないように対処しなければなりません。
将来の資金繰りは様々な要素で構成されます。そしてそれぞれの企業の業種、規模、業態により条件が異なり、さらには諸要因により常時中身が変動します。

この経済情勢下では、おいそれとは本業の拡大は見込めません。しかも金融機関の融資先選別は厳しさを増すばかりです。より正確な資金繰り見込みを算出し、それに応じて瞬時に行動を起こし、早期に適正な企業形態と規模へシフトしなければなりません。
日頃作成している「売掛金台帳=月毎の相手先別売上と入金予定日一覧表」に加え、

 「買掛帳=月毎の相手先別仕入と支払予定日一覧表」、
 「残高試算表の経費勘定」、
 「金融機関別の償還予定表(返済予定表)」、

これらが資金繰り予定表のスタートであるのは言うまでもありません。


【資金繰り表の作成準備】
◎基本的に消費税込み数値で計画を立てる!

1.収入及び支出項目の拾い出し
 収入であれば、売上代金の回収、収入賃貸料、貸付金・立替金・未収入金の回収、金融機関等からの調達、増資等です。支出であれば、仕入代金の支払いや外注費、人件費(給与、法定福利費等)、家賃、水道光熱費、広告宣伝費、旅費交通費、リース料、税金(法人税、住民税、固定資産税、消費税等)、支払利息等の支払い、借入金返済及び調達等があります。
これらについて、過去の帳簿や売上予測(下記参照)等を参照しながら、拾い出す事が必要です。


2.売上と回収の金額及び時期の予測
 収入項目で最も重要な売上代金回収金額を予測する為に、過去の売上実績を基に現状分析を行った上、今後3ヶ月から6ヶ月間における売上予測を立てます。ある程度売上目標的な数字になってしまいますが、実際の収入が少なかった場合には資金繰りが厳しくなる可能性があるので、堅めの数字(金額及び時期)をあげます。また、売上予測については日々見直す必要があります。
売上予測が立ったら、それに基づき売上金回収予測を立てます。実際に売り上げてから代金が回収されるまでには、しばらく時間がかかります。それを見込んで、例えば来月売り上げたものはいつ入金するのかを考え、各月の売上代金回収予測を立てます。

※必要データ
  ・売上高計画表
  ・売掛金回収予定表
  ・受取手形管理表(期日管理)


3.仕入、外注費、人件費等経費予測
 支出のうち、仕入、外注費、人件費など、必要不可欠な経費の支出予測を立てます。仕入、外注費などは、売上の増減に比例するもの(いわゆる変動費)ですので、売上高計画表の予測と整合性が取れるように支出予測を立てます。
人件費、家賃などは、売上の有無に関わらず支出するもの(いわゆる固定費)ですので、ある程度決まった金額を計上します。ただし、賞与等の季節資金、人員増や人員減が計画されている場合には、それを織り込んだ計画にします。
経費等についても、ものによって支払い時期が異なりますので会社で定めている支払条件(締切日・支払日・現金手形割合及び手形サイト)を基に計画を立てていきます。
人件費は当月分当月払い、仕入代金や外注費は翌月以降になる事が多く、家賃は前払いというのが一般的です。
税金は、法人税・住民税・事業税が年2回、消費税が年4回(売上規模により異なります)、その他としては従業員の源泉所得税等の納付があります。
社会保険料については、従業員分を給与天引で預り、それに会社負担分を加えて納付します。

※必要データ
  ・支払手形管理表(期日管理表)


4.金融機関からの調達及び返済予測

 新規借入、借入返済等の金額を収支に加算していき、それに伴う支払利息も計画していきます。

※必要データ
  ・金融機関別償還予定表


5.月末預金残高の予測

 最低限の収入予測と最大限の支出予測が計画出来たところで、毎月の収支差額と月末の手持預金残高を確認します。月末預金残高がマイナスになるようであれば、まずは支出の削減及び繰延、売上増加策及び入金の前倒が可能かどうかを検討します。それでもなお赤字であれば、借入の検討を付合いのある金融機関と行う必要があります。



【注意点】
 資金繰り表は実際の資金の流れを管理予測するものですから、会計上の月次決算の数値とは合致しません。


【月中ショートの懸念】
 月単位での資金繰り予定表では月末で見れば帳尻が合っていても、ある特定日においては一時的に資金不足をきたすことがあります。例えば、人件費や仕入代金の支払は25日、売上代金の入金は月末に集中、という場合には、前月末の資金残高が不足していると25日の支払に支障をきたす場合があります。そういう危険性(自転車操業)がある場合は、当月、翌月分については、1日単位か10日単位での入出金予測を立て、資金繰り表を作成する必要があります。無論、そうならないように一定の運転資金を確保出来るような中期の資金計画を行っていく事が望ましいです。
また、1日単位の日別資金繰り表を作成及び管理する際には、どの口座にいついくらの入出金が生じるのかがわかるようにしておく事が重要です。








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